7/31 絵画近くで観るか遠くで観るか

少しの陽で一日火照る。前も書いたような気がする。

・津波注意報が解除された。近くに海のない地域に住んでいるが水の怖さは充分に知っている世代だ。それでも被害や誤解、想定外があるからやはり恐ろしい。一度海のそばで一人暮らしをしたことがある。そのときの不安ったらなかった。嵐の前、サイレンが響いていつも人の少ない町は本当にもう誰もいないんじゃないかと思うほど静かだった。高齢者だけ避難しているのか、皆いないのか全くわからず、さほど親しくない職場の先輩に半泣きで連絡をした。海はやさしく、ときにゾッとする。あの暮らしはもう一度したいが、次は親しい人を作ろうと思う。

・ぐったりした日が続いていたが、無理に動いても同じ1日なら今日は動こうと美術館へ。ありがたく家族が付き添い送迎してくれたおかげで、無事帰ってこられた。館内はかなり冷えていたけれど作品のための温度。自分も美術品の一部として歩く。作品はどれも素晴らしく、久しぶりにじっくりと観てまわった。私はまだ心が狭くシャッター音の響く室内に慣れていなんだけれど。撮影の前に居座るのも申し訳なく、ささっと観てしまった作品たちに心残りがある。ただ、たくさんの人に見てほしいと願った作家がいるのも確かなので鑑賞人口が増えるのは喜ばしいと心から思いたいところ。実際美術館の経営が厳しいのはそばで見ていたので、何様ですが鑑賞環境が守られつつ鑑賞者の希望が共存できる展示が増えるといいな。

・絵を観るとき離れてみたり近づいたりする。私はなぜか、どの作品を観ても近くで見たときの方が惹かれることが多い。筆致とか、背景の色が混ざっているところとか、物体と別のものの境とかを拡大して、何かわからなくなった箇所が好き。なぜかはまだわからない。以前大規模な印象派の展示のグッズで、あらゆる作品の一部を拡大し、キャンバス地にプリントした缶バッチ(長い)があって一目惚れしたことがある。「何かわからないけど色が面白い」みたいなものが見ていてワクワクするからかもしれないし、筆致のはっきりしたところが好きなのかもしれない。描いていたってのが感じられるのも良い。

・昔、美大のオープンキャンパスに行ったとき、ある知らない先生に「好きと思った理由を考えてみなさい」と言われた。それがずっと忘れられない。それをしたらきっと誰かの好きなものが作れるし、自分の好きも言語化できるんだろう。その方の本意はどこか聞く機会はないんだけれど、ずっと気になっている。

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